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「通信制と定時制の違いは何?卒業後の進路で差はつくの?保護者さんの疑問に専門家がお答えします」

2025/10/14

はじめに:お子さまの未来のための「もう一つの選択肢」


お子さまの高校進学や転校を考えるとき、「全日制高校(一般的な高校)」以外に、「定時制高校」と「通信制高校」という選択肢があることはご存知でしょうか。

どちらも「高等学校」として、卒業すれば全日制と同じ「高校卒業資格」が得られます。しかし、その学習スタイルや学校の雰囲気は大きく異なります。

特に、お子さまが不登校の経験があったり、自分のペースで学びたいという希望を持っていたりする場合、この二つの違いを理解しておくことは、未来を切り開くための大切な一歩となります。

この記事では、保護者の皆さまが抱える疑問に専門家がお答えする形で、定時制と通信制の決定的な違いを、分かりやすい言葉で解説していきます。


 

1. 登校スタイルと「出席」の柔軟性

 

定時制高校と通信制高校の最も大きな違いは、「出席」に対する考え方と、学習の仕組みです。

 

定時制高校:「学年制」が多いため、全日制に近い感覚で出席が必要

 

定時制高校は、一般的に夕方や夜間に授業が行われます。公立が多く、全日制高校と同じ敷地内にあることも珍しくありません。

  • 登校: 授業のある日は毎日(週に4~5日)登校が必要です。

  • 学習の仕組み: 多くの定時制高校は、全日制と同じ「学年制」を採用しています。これは、1年間の単位をすべて修得しないと進級できない仕組みです。

  • 「出席」の重要性: 学年制であるため、授業の欠席が続くと進級に関わります。体調や精神面で毎日決まった時間に通うことが難しいお子さまには、負担になる可能性があります。

 

通信制高校:「単位制」だから、出席は「スクーリング」だけ

 

通信制高校の学習は、「レポート(自習課題)」「スクーリング(面接指導)」「単位認定試験」の3つが柱となります。

  • 登校: 登校日(スクーリング)は、学校やコースによりますが、月に数回程度、あるいは年に数回の集中型で済みます。

  • 学習の仕組み: ほとんどが「単位制」です。これは、必修科目を含め、卒業に必要な74単位(※高校卒業に必要な総単位数)さえ修得できれば卒業できる仕組みです。

  • 「出席」の柔軟性: 単位認定の条件としてスクーリング(登校)は必須ですが、出席日数が足りないことで留年することはありません。登校に対するハードルが極めて低いため、不登校の経験があるお子さまにとって、精神的なプレッシャーが少なく、安心して学べる環境と言えます。


 

2. 通う生徒の「年齢層」の違い

 

定時制と通信制は、生徒の平均年齢にも違いがあります。この違いは、学校の雰囲気にも大きく影響します。

 

【公的データで見る】生徒の平均年齢

 

文部科学省の学校基本調査(検索結果2.1)によると、両課程の生徒の平均年齢には傾向があります。

課程 平均年齢の傾向
定時制高校 16~17歳が多い(全日制からの転入・編入が多いため)
通信制高校(全体) 平均約19歳
公立通信制高校 平均約21歳(社会人や再チャレンジの生徒が多い)
私立通信制高校 平均約17歳(10代の高校生年齢の生徒が中心)
 

定時制高校は、高校生年齢の生徒が中心ですが、通信制高校は、公立か私立かで大きく年齢層が分かれます。

特に私立の通信制高校では若年化が進んでおり、文部科学省のデータを見ても、在籍する生徒の約7割が15~17歳と、全日制高校と変わらない年代の生徒が多数を占めています。

つまり、「通信制高校には大人の生徒が多いのでは?」というイメージは、現代の私立通信制高校においては当てはまらなくなってきているのです。


 

3. 学費と「面倒見」の現実

 

学費とサポート体制は、保護者さまにとって最も気になるポイントでしょう。公立か私立かによって、その費用と体制は大きく異なります。

 

定時制高校:公立がほとんどで「学費が安い」

 

定時制高校は、その多くが公立です。

  • 学費の傾向: 公立であるため、授業料は実質無料になる家庭がほとんどです。教科書代などの実費のみで済むため、費用面での負担は非常に少ないのがメリットです。

  • サポートの傾向: 授業の面倒見や生活指導はありますが、全日制と同様に、個人的な学習の遅れや精神面まで手厚くサポートすることは、教員体制の都合上、難しい場合があります。

 

私立通信制高校:学費はかかるが「面倒見が良い」

 

私立の通信制高校は、公立と比べて学費はかかりますが、その費用は手厚いサポートに使われています。

  • 学費の傾向: 授業料は全日制の私立高校と同程度、あるいはそれ以上になる場合があります。公立定時制と比べると費用は高くなりますが、こちらも就学支援金制度の対象です。

  • サポートの傾向: 私立通信制高校は、生徒が挫折しないよう、学校独自のサポート体制を充実させています。

    • 学習サポート: レポートの添削指導や、対面での個別指導、オンライン授業などが充実しています。

    • 精神面・生活面: カウンセラーや専門スタッフが生徒に寄り添い、不登校経験者への配慮や、進路相談にきめ細かく対応します。

費用対効果で考えた場合、「費用は抑えたい」なら公立定時制、「費用がかかっても、手厚いサポートと安心感を買いたい」なら私立通信制、という選び方が一つの目安になるでしょう。

 

おわりに:お子さまに合った「自由」を選ぶ

 

定時制高校と通信制高校は、それぞれにメリットがあります。

  • 公立定時制: 費用を抑えたい。毎日決まった時間に登校する習慣をつけたい。

  • 私立通信制: 登校のプレッシャーをなくしたい。手厚い個別サポートを受けたい。

お子さまにとって最も大切なのは、「自分らしく学べる場所」を見つけることです。そのためには、インターネットの情報だけでなく、実際にいくつかの学校の資料を取り寄せ、見学や個別相談に行くことを強くお勧めします。

お子さまのペースと個性に合った選択肢を見つけ、未来への一歩を踏み出しましょう。